小学3年生の夏のはじめ。
おばあちゃんの家に泊まった。
それはもうとんでもないド田舎で、
夜8時には本気の闇が辺りを支配する。
状況的には、何かしら「出る」。
そんなシチュエーションだ。
とにかく夜がめっちゃ怖いんです。
怖くて怖くて寝れないんです。
家族はみんな寝静まり
寝付きの悪いぼくだけが闇の中にひとり取り残された。
田舎特有のオレンジ色の豆電球みたいなのが点いていて、
目を開けるとぼんやりと部屋の中の色々なものが見える。
こういう家に限ってなぜか
古~い市松人形みたいのも飾ってあって
それがまたとんでもなく恐ろしいんです。
目を開けたら負けだ。
ぼくは必死に目を閉じて寝ようとした。
けど、やっぱり怖くて寝れない。
いま何時なのだろうか。
羊も何匹数えたか分からない。
田舎の闇の恐怖と寝れない焦りに我慢できず、
薄っすらとだけぼくは静かに目を開けた。
すると、
窓の外に怪しく浮遊する光がいくつもある。
カーテン越しにではあるが確かに見える。
状況的には完全に火の玉だ。
やっぱり、「出た」。
泣き叫びながら隣で寝ている兄貴を起こした。
不機嫌な兄貴に頼み込んで
いっしょに外を確認してもらうことにした。
窓のカーテンを開ける。
ぼくたちの眼前に広がったのは
火の玉ではない。
儚く輝く無数のホタル。
その日数えた羊の数より多い。
本気の闇に抗うかのように、
儚い点滅を繰り返す。
目を閉じたら負けだ。
兄貴とふたり無言で見つめた田舎の景色。
30年経っても忘れられないド田舎の景色。
いまでもたまに思い出す
夏の夜のゾッとする話でした。
今週のお題「ゾッとした話」