【サッカー】少年サッカー観戦記16/1点差の予感
2023.07
この日行われた大会は、小規模ながらも優勝すれば全国大会に出場できる。選手たち、とりわけ息子の鼻息は荒く、少々気合が入りすぎじゃないかと心配したくらいだった。
まずは予選リーグを2試合。1位通過なら決勝トーナメントに勝ちあがり、2回勝てば優勝。最近は小さな大会はどれもこのパターンだ。
予選リーグは何とか突破できた。1試合目は接戦の末ドロー、2試合目はダブルスコア以上の圧勝。1勝1分が2チーム並んだが、得失点差で息子のチームの決勝トーナメント出場が決まった。息子は1試合目は振るわなかったものの、2試合目は4ゴールを決めて予選突破に少なからず貢献した。格下のチームにはめっぽう強いようだ。
そして、決勝トーナメント。
1戦目はかなり苦戦しながらも2対1の逆転勝利を収めた。
この結果、チームが久しぶりにザワついた。
小規模な大会ながらも全国が見えたのだ。
チーム初の快挙まであと1勝。
選手たちよりもむしろ保護者がソワソワし始めた。
この日。気温は35度を超えていた。
今年一番の暑さと言っていい。
決勝戦までの約1時間半で選手たちを回復させないといけない。
つまり、ここからは保護者たちの戦いなのだ。
会場は古びた河川敷のグラウンドで十分な設備など無い。コーチからの指示で選手は全員冷房を効かせた車で待機することになった。こんな指示は始めてでぼくも結構ワクワクした。日本代表のスタッフになったような気分になり、いつもの3倍位のテキパキ感で動いた。とり急ぎ、短時間で回復させるためにはどうすれば良いのかググってみた。
●まずは熱中症対策で水分補給
●そして塩分補給の塩タブレット
●本当はシャワーがいいらしいけど無いから水で濡らしたタオルで体を拭いた
●マッサージも効果があるらしいがくすぐったがりの息子に拒否された
●ストレッチはやるように伝えたけど結局全然やらなかった
●甘いものはいらないと言われた
●リラックスさせるために普段よく見る動画の音声だけ聞かせた
そんな感じで回復に努めたが、終始興奮気味の息子は、さっきの試合の話や全国大会に出場したらどうするかなど、とにかく喋り続けた。休めよ!と思いつつも、次の試合に絶対に勝ちたいという気持ちは伝わってきた。
決勝戦は予定よりも10分早く始まった。
序盤、相手チームのプレイを見てなんとなく嫌な気がした。組織立っている。「個を重視する」というチームコンセプトは両者似ている。が、しかし、それに加えて、組織立っている。うまくは言えないけど、1人ひとりがテクニカルでまとまりもある。息子たちのチームよりもひとまわり上な印象だった。
なんとなく嫌な気がした。
しかし、試合は拮抗した。
猛暑の中、まさに熱戦と呼ぶにふさわしい試合だった。
序盤から早くも1点勝負の気配がした。
それほどに、両チームとも集中していた。
球際が激しい。表情は険しい。
そして、保護者席はいつもより騒がしい。
早い段階から1点勝負になる気がした。
そして、その1点は思ったよりも早い段階で生まれた。
いつもより興奮していたのだろうか、何分のことだったか覚えていない。
得点したのは相手チームだった。
どんなゴールなのか覚えていない。
その後どんな展開だったのかも覚えていない。
息子がどんなプレイをしたのかも覚えていない。
息子が交代したタイミングすら覚えていない。
ただ純粋にチームの勝利を願ったけど、叶わなかった。
そんな1戦だった。
ただ、はっきりと覚えているのは、
試合後、選手たちがめっちゃ泣いていたこと。
ママさんたちもめっちゃ泣いていたこと。
帰りの車中で息子が無言だったこと。
そして、ひとことだけ、「優勝しか勝たん」と息子が呟いたこと。
0対1。夏休み直前に行われたこの日の大会は、準優勝という結果に終わった。
上手くなるためのスパイスは「悔しさ」だと、有名な誰かが言っていた。
小学生最後の夏休み。
きっと今年は、「サッカーしか勝たん」。
そんな夏になるだろうと思った。