ワイツーブログ

好きなことや楽しいことをワイワイと書き記します。

【サッカー】少年サッカー観戦記20/泣き虫ストライカー

午後にむかって雲が厚みを増していた。

 

2023.09

 

大会2日目。この日は最大で3試合。2試合勝てば県大会出場が決まる大切な1日だった。昨日の試合は最初から勝てる雰囲気があった。しかし、この日の1試合目は一言で言えば「互角」といった印象。とにかく点が入らない。観戦している保護者たちもハラハラピリピリしていた。

 

前半、息子の出場はなかった。でもわかっていた。出番は必ず、ある。これまでのどの大会でも、点がほしいときは必ず息子が呼ばれているのだ。限られた時間で点を獲る。小学6年生にして彼はけっこう困難なミッションに挑戦している。これって、すごくいい傾向だと思う。

 

予想通り、後半スタートと同時に息子が投入された。昨日は1点リードの状況だったが、今日はスコアレスの状況。負けたら即帰宅。ピリついた展開だ。息子の動きはおそらく良かった。素人目にも少しチームの雰囲気が変わったように感じた。結果的にこの試合唯一のゴールを奪ったのは彼ではなかったが、チームは接戦をものにした。これはでかい。あと1勝で県大会出場が決まる。

 

この日は午後から雨の予報だったこともあり、2試合目は30分マキで始まった。白かった雲が少しずつ灰色に染まっていた。この試合も息子はベンチスタートだ。

 

チームは前半のいい時間に先制点を奪った。力の差はそこまでない。「なんとなくいけるぞ」という雰囲気が保護者席には漂っていた。実際攻め込むシーンが多かった。組織的に機能していたのは相手チームだが、個の力では明らかに勝っていた。

 

しかし、追加点が決まらない。後半に入っても再三攻め込むもののシュートまで行けない。選手たちの疲労の色が濃い。涼しくはなってきたけれど、依然として残暑が厳しい。試合終了が近づくにつれ「守れば勝てる」的な空気がピッチ場に漂っていたように感じた。嫌な流れだ。

 

そんな中、残り時間5分で息子が投入された。交代の意図は明確だ。1点奪って試合を決めろ!県大会出場をもぎ獲って来い!彼の投入は「攻めろ」というメッセージでしかない。

 

この場面で1点穫ればヒーローになれる。ここ数ヶ月、息子とよく話し合ってきた。大事な試合の終了間際。自分のゴールでチームを救う。10ヶ月前、5年生の大会の中でも一番重要な試合で、同じような場面があった。その時は、息子に決定的なチャンスが巡ってきたが、わずかに枠を外してしまった。あの試合のことを息子はたまに思い出すらしい。その時も途中出場だった。限られた時間で結果を出すのはプロでも難しい。試合後、そんな風にコーチに慰められたのを覚えている。

 

yuiyasu.hatenadiary.com

 

 

あの時のリベンジだ。息子もきっとそう思っていたにちがいない。いちばん重要な場面でゴールが穫れる選手になりたい。彼は生粋のストライカーなのだ。

 

でも、現実はシナリオ通りには行かない。

 

息子が投入されてすぐ。まずは味方のキーパーが負傷退場となった。これが布石だったのだろうか。その数分後に相手チームのスーパーゴールが決まり、試合は土壇場で振り出しに戻る。センターライン近くからの超ロングシュート。キーパー退場後の出来事。あれが決まるのはアンラッキーとしか言えない。息子は最後まで果敢にゴールを狙った。迫力はあった。が、決定機はつくれなかった。

 

そして、PK戦の末、息子のチームはまたあと一歩のところで県大会出場を逃した。5年生のあの試合と同じような展開だった。

 

ピッチ上で泣き崩れる息子を見たのは、これで何回目だろう。

人一倍泣き虫なので、彼はよく泣く。

成長を感じたのは、PKを外した仲間のところに真っ先に駆け寄ったこと。

その子の肩を抱えながら、いっしょに泣いていたこと。

 

帰りは選手も保護者もお通夜のような雰囲気だった。

みんな下を向いていた。涙が止まらない子もいた。

ただ、それから1時間も経たないうちに、みんな笑顔で追いかけっ子をしていた。

子どもの回復は、早い。

 

息子にいたっては、友達といっしょに回転寿司を食べるんだ!

と保育園児バリの駄々を捏ねまくっていた。

なかなかOKが出ないと終いには、

敗退が決まった瞬間と同じくらいの勢いで泣き崩れていた。

この世の終わりみたいな顔をしていた。

 

人一倍泣き虫な彼は、すぐ泣くのだ。