2022.09.11
隣町で開催されたサッカー大会に出場した。大会というか大規模なトレーニングマッチという感じ。15分間のゲームと5分間の休憩を繰り返すレギュレーション。6チームが集まって午前午後で5試合ずつ、計10試合が行われた。
この日の息子は調子が良くて、初戦から体が軽そうだった。スロースターターな彼はだいたいいつも初戦の動きが悪い。世界的なスター選手のように最小限しか走らず、守備をあからさまにサボる。そしてコーチに怒られる。
でも、この日は違った。
前線から積極的にプレスをかけ、時には自陣ゴール前まで戻って守る。何より献身的で、いつものようなワガママプレーが見られない。勝ちたい気持ちに溢れていた。
前日に2人で練習したのが良かったのだろうか。練習と言ってもダラダラと何となくボールを蹴り合うだけ。珍しく自分から「ボレーの練習がしたい」と言うのでサッカーゴールがある公園にでかけた。
話を聞くと、最近ゴール前でパスを受けても相手に獲られることが多いという。足元の技術がそこまでないことを自覚しているみたいで、ダイレクトプレーを練習したほうが良いと自分なりに考えたという。
いや、そういうことならまず足元の技術を磨くべきでは……と思ったけれど、解決策を自分で考えたことが素晴らしいなと思った。公園では延々とぼくがクロスを上げて、というかクロスを投げて、それを息子がゴールに突き刺すという作業を40分くらい繰り返した。練習内容として合っているかは分からなかったけれど楽しそうだったから良しとした。
とにかく、練習の甲斐もあってか息子の調子がいい。午前中は良い場面で2アシストを記録しコーチからも褒められていた。休憩時間にはマンツーマンで何かアドバイスをもらっているようだった。昼休みに何を言われたか聞いてみた。
●アシストは素晴らしかった。
●でも自分でゴールを決める意識を忘れるな。
●ボールと相手DFの間に体を入れろ。
ざっくり言うとそんな感じ。
確かに午前中は献身的ではあったものの彼の持ち味であるゴールへの異常な執着心が薄かった気がする。チームの中でも上手な方では無いけれど、ゴールへの執着心だけはチームイチだと思う。
余談だけど、小1の時、キッカーに選ばれなかったことが悔しすぎてPKのボールを奪って逃げるというエキセントリックな行動に出たこともある。怒り泣きながら必死に逃げまわる表情が虎みたいにおっかなかったのを覚えている。
そんな虎。午後の部は初戦からハットトリックを決めた。ぼくはビデオを回しながらニヤニヤしていた。その後の試合でも良い動きをしていて、今日はもう満足だ~と思ってビデオを回すのをやめた。肉眼でゆっくり観戦したかったのだ。
最後の試合も動きが良かった。
そして、試合終了間際。
コーナーキックから、ついに虎のボレーが炸裂した。
それはそれは力強く美しいシュートで一瞬会場がざわついた。ママさんたちはジャニーズのライブみたいな歓声をあげ、コーチはニヤニヤしながら雨が降るんじゃないかと空を仰ぐジェスチャーで祝福した。
遠くて息子の表情は見れなかったけれど、きっといつものように少し恥ずかしそうな表情で笑っていたに違いない。
ぼくも嬉しかった。昨日の練習がダイレクトに身を結んだ気がした。でも、それと同時にビデオを回していなかったことを激しく後悔した……
とにかく、6試合/4ゴール/2アシスト
帰りの車の中。「あと5点は獲れた」と、小さな虎は恥ずかしそうに笑っていた。