ワイツーブログ

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【雑談】そっくりさんは世界に3人いると言うが…

25歳くらいの頃の話。あまりにも暇だったので喫茶店で時間を潰していたら、ぼくと同じTシャツを着た人が隣の席に座った。人気のブランドだったからそこまで珍しいことではなかったけれど、ちょっと気まずい。きっと周囲からは兄弟か売れないお笑いコンビみたいに見えていただろう。しかも、ぼくと同じウィンナーコーヒーを注文した。彼も甘党のようだ。

 

これは気にしたら負けなやつだと思い、本の続きを読むことにした。しばらくすると、彼がタバコを吸おうとライターをいじり始めた。なかなか火がつかず何回もカチカチやっているものだから、ついついチラ見してしまった。

 

いや、マジか…タバコの銘柄も同じやん…

 

こうなってくると、もう他人とは思えない。これは運命に違いないのだ。本を読んでいるフリをしながら少し彼を観察することにした。顔もそこそこ似ているし、何より全体的な雰囲気が似ている気がする。体格も髪の長さも似ている。自分で似ていると思うくらいだから、きっとめっちゃ似ているのだろう。

 

休日の昼下がり。わざわざこんな寂れた喫茶店に来ている彼とぼく。自分に似ている人は世界に3人はいると聞いたことがあるが、ぼくのそっくりさんの1人は間違いなく彼だ。外見だけではない。趣味趣向も限りなく近いように感じた。

 

これは運命だ。その証拠に、彼がいまブックオフの袋から取り出した本は、ぼくが読んでいた本と一緒なのだ。ぼくの本にはカバーを着けていたから彼はまだ気づいていないが、これは運命、というかもはや奇跡だ。

 

この奇跡を彼にも伝えたい。君と同じTシャツを着て、君と同じウィンナーコーヒーを飲んで、君と同じタバコを吸いながら、君と同じ本を読んでいる男が、君のすぐ隣にいるのだ。もう読書などしている時ではない。ぼくを見ろ。この奇跡を見ろ。

 

ぼくは何気なくカバーを外し、彼から見える角度に本をそっと置いた。視線を少しこちらに向ければ、きっちりタイトルが見えるはずの位置だ。ぼくはドキドキを抑えながら、時折彼の方を見ながら、その瞬間を待った。

 

そして、ついに彼の視線が動いた。少し笑った気がした。やっと気づいたかブラザー。そう思った瞬間。一人の女性が彼に近寄った。どうやら彼の彼女だ。めっちゃかわいい。なるほど、女性の好みまで同じなのか…

 

しかし、時間を潰していただけのぼくと、かわいい彼女と待ち合わせをしていた彼。一見そっくりな2人も、この場所にいる理由が全く異なっていたのだ。

 

それから彼らはしばらく談笑をして、イタリア人カップルのようにイチャイチャしながら店を後にした。

 

ぼくは冷めきったウィンナーコーヒーをひと口飲み、小さくため息をついた。視線を落とすと、テーブルの片隅にはブックカバーを剥がされた本が、さみしげに置かれていた。それは、もう5回以上も読み返している大好きな本だった。