【お題】キャンプは赤く切なく燃える
ブームなのでやってみたいとは思っているが、キャンプはほとんど経験がない。
でも割といい歳なので何度かやったことはあるはずだと思い、Googleフォトに残っている写真を見返しながら、記憶を遡ってみた。
あった!1枚だけ!
おそらくキャンプの時に撮ったであろう写真があった。
生まれた時から一緒にいるような、そんな気の合う幼なじみたちとの川辺のキャンプだ。泳いで、騒いで、酒飲んで、みたいな平凡な内容だったので、正直、特に記憶に残ってはいない。
ただ、夕飯の準備の際、文明の利器を使わずに火を起こそう!と言い出したやつがいた。この時のそいつのニヤニヤした顔は、しっかり覚えている。
よ〜し、やってやる。みんな乗り気だった。
とりあえず、小学校で習った虫眼鏡パターンとか簡単だったから、何とかなるだろうと誰もが油断していたのだ。そして、まず虫眼鏡が無いことで予定は大幅に狂った。
そうなると、火打ち石パターンが次の候補だ。時代劇とかで、旅に出る旦那さんの無事を願い、奥さんが玄関先でカチカチ石を打ち付けて火花を散らすシーンでお馴染みのあの方法だ!川原で石を拾ってきて、みんなで思い思いにカチカチやってみた・・・
いや無理だ!
こんなの火がつくはずない!
後々知ったけど、どうやら火打ち石パターンって、専用の火打ち石が無いと無理らしいのだ。そんなことも知らず、あの時は、良い大人がよってたかって石をカチカチしていたかと思うと恥ずかしい。
これはもうあれだ。木の枝ぐるぐる回すパターンしかない。摩擦で何とかする例のアレしか思いつかない。とりあえず、木はたくさん落ちているし、なんとかなるはず。みんなで良さげな木の枝を拾い、ぐるぐるやってみた。
いやいや、無理だわ!
これでどうしたら火が着くの?
ぐるぐるパターンも、小学校の行事か何かでみんなでやったはずだから、何とかなると思っていた。
でも、よくよく思い返せば、あの時はやりやすい道具が一式用意されていた。実際、あんな鋭利で丈夫な枝はなかなか無いし、あんなに摩擦を起こしやすそうな板状の木も落ちていない。
しかも、薄っすら残っている小学校時代の記憶によると、回す方の枝は、なんか弓みたいな形状になっていた。ちょっとしたギアっぽいやつだった。
ぼくたちは途方に暮れ、おまけに日もかなり暮れてきた…実際、木の枝を探しに行ったタイミングで、もうちょっと暗くなってきていたのだ。
これはヤバイ!ライター使うしかって話でまとまりかけた時、仕事終わりで参加する予定だった山口くんが遅れて到着した。
一通り状況を説明した後、山口くんは、ジャムの蓋が開かない時のお父さんみたいな顔して「俺に任せろ!」と、言った。
実は山口くんはキャンプ上級者。
いや、結果的に火は着いた!後々調べてみたところ「火溝式」とかいう上級者でもかなり難易度が高い方法で、たしかに火は着いた!
正直、めっちゃすごいと思った!
めっちゃすごいと思ったけど…
山口くん、めっちゃ時間かかってた!
その結果、夕飯を食べたのは夜の9時を過ぎていた。
ぼくは、あんなにも美味しくて切ないカレーを食べた記憶がない。
ちなみに、上級者の山口くんですらなかなか火が着かず、諦めかけていた時、ぼくたちの頭上で、終わりかけの夏の空は、この上もなく美しく燃えていた。
Googleフォトに1枚だけ残っていた写真は、その時に撮ったものだ。
あんなに、赤く、キレイに燃える夕焼けを、ぼくは見たことがなかった。
今週のお題「キャンプ」