正直、給食のメニューになど興味はなかった。ただただ食べる速さだけを求めていた
昼休みはサッカーがしたいのだ。早く食べなきゃ、昼休みの時間が削られてしまう。早く食べなきゃ、他学年にグランドが獲られてしまう。
小学生の時なんて、昼休みにサッカーをするためだけに生きていた。そう言っても過言ではないのだ。いや、多少過言だ。
とにかく、給食は早く食べることだけに集中していた。ある日カレーを中心とした好物ばかりが出たとき、3分で食べ切ったことがあった。担任の先生は、恐れ慄いた顔で、いや呆れた顔で、こうつぶやいた。
きゅ、給食キングの誕生や……
か細い声だったが、たしかに聞こえた。その日から、ぼくは給食キングになった。思い出補正がかかっていないマジの話だ。小学生が担任からマジのトーンで「キング認定」されたのだから、はっきりと覚えている。
そんな給食キングにも弱点があった。水分が少ないメニューだ。飲めない。だから、やばい。揚げパンはマジやばい。うまいけどやばい。
給食キングの喉は繊細なのだ。
そんな給食キングの別ベクトルでの最大の敵は、焼きそばだ。「給食焼きそば」は、独特な味で美味い。だから、やばい。おかわりが、ほしくなる。だから、やばい。
つまり、休んだやつの分まで食べたくてたまらなくなるのだ。
ぼくの学校のルールではおかわりはジャンケンで決める。厄介なのが、早く食べた人の中で、おかわりを希望する上位5名がジャンケンする。という謎ルール。このルールによると、いくら早く食べても、おかわりが欲しければ、5人集まるまで待たなければいけない。謎すぎる。
だから、普段はおかわりはしない。カレーも、揚げパンも大好きだったが、給食キングにおかわりはご法度なのだ。でも、焼きそばだけは、あの独特なモッチリ感がたまらない「給食焼きそば」だけは、おかわりせずにはいられなかったのを思い出す。
あの独特の味と食感は、家でも、お店でも、屋台でも再現できない気がする。安っぽいけど、どこか暖かい。そんな味だった。
好きだった給食のメニューをひとつあげるなら、焼きそば。
早く食べることにしか興味がなかった給食キングが、唯一時間をかけておかわりをしたメニューだ。
「給食焼きそば」は、美味しすぎてやばい。そして、意外と水分も無いから、それもやばい。繰り返すが、給食キングの喉は繊細なのだ。
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